2012/07/03
島悟先生へ
島悟先生へ
先生、ありがとうございました。
先生には、
ご存命中に、
お礼とご報告へ伺いたかったです。
お礼がこんなにも遅くなってしまい、
本当にごめんなさい。
先生が命を終えられたことさえ、
今日知りました。
余りにもショックで、
何時間も泣きました。
先生と交わした言葉や情景が
何度も頭の中に甦りました。
ちゃんとお礼をしたかったので、
時間がかかっていたのです。
*
先立たれる先生方に
お礼が間に合わないという事は2度目です。
でも、先生。
わたしは今回、
後悔をしていません。
仕方がなかったと思えるからです。
なんの文脈もなく
ふいにその人が頭を過ぎるとき、
わたしは相手の思考として
それを認知することにしているのですが
(ファンタジーですね)、
その時も、
連絡はまだ無理だと判断したのは自分自身でした。
先生にだから、
中途半端なお礼はしたくありませんでした。
*
全力で、ですが。
初めてわたしなりにゆっくりと
自分の感覚を大切にしながら
4年をかけて、
リハビリをすることが出来ました。
その間に、
先生の命が燃え尽きてしまったことは、
仕方がなかったのだ…と思います。
仕方ないという言葉は、
なんて静かな言葉でしょうか。
どうしてこんなに色んなものを包み込める
言葉なのでしょうか。
*
先生ともう2度とお会いできないことは、
とても哀しいことですが、
泣きはらした後、
何か食べなくてはと
フライパンでチャーハンを炒める自分は、
なんて成長したのだろうかと思います。
こんなに心が締め付けられていても、
身体の声が聴こえている自分は、
どれだけゆとりを持てるようになったのだろうかと思いました。
泣きながら作ったチャーハンの味も、
淹れた紅茶の味も、
よく判らなかったのですが、
15時過ぎの窓辺の光は明るく澄んで透明であり、
大変美しい時間でした。
先生の死を悼むにふさわしい
美しさでした。
*
出会いとは
素晴らしいものですね。
思えば、
先生はわたしの心の声を拾い上げてくださった、
最初の人だったように思います。
先生は、
他の誰でもない、
「わたし」と向き合ってくださいました。
そして、
時には、
先生の意見を言ってくださいました。
反発もしましたが、
やはりちゃんと観ていてくださる方の意見は違うのですね。
先生が、わたしをちゃんと聴いて、
そして意見をくださっていたことはとてもよく判りました。
人生において、
先生との接点はとても短いものでしたが、
どれだけのことを、
わたしは先生から学んだことでしょう。
先生からいただいた、
最初で最後のお電話を、
わたしは忘れられそうにありません。
その節は、
本当にありがとうございました。
*
先生と、
先生のお父さまの絵を拝見して交わした会話。
先生がクリニックのロゴのアイデアを気に入ってくださったこと、
わたしのイラストを飾ってくださったこと。
静かな語調。
魂に触れる会話。
全て、当時のわたしには
大変得がたいものでした。
先生が居てくださったから、
わたしは2度も勇気が出せたのです。
これは本当のことです。
先生に対するそれは幻想だったかも知れません。
でもわたしは先生がいらっしゃったから、
勇気が振り絞れたのです。
新しい選択肢をとる事が出来たのです。
*
そして先生。
先生はわたしがこんなに幸せになると
想像されたでしょうか?
わたしは
あの頃始めたアクセサリーを作り続けていて、
沢山のお友達やお客さまに支えていただきながら、
社会に戻ってきています。
モテオーラが出ていると言われたりもするようになりました。
驚くべきことではないでしょうか!
*
先生にお礼が言いたかったのです。
きっと先生は、
そのお礼の意味を
ちゃんと受け取ってくださるのではないかと、
そんなことを思っていたのかも知れません。
*
わたしは先生の考え方が
とてもとても本質的であると感じていました。
先生と共有させていただいた時間は、
確かな光を放ってわたしの心に刻まれています。
*
「いつか先生と本を出したいです」とお話した際に、
「ありがとう」と返してくださった先生。
ありがとうの意味は一生謎のままででしょうか。
インスピレーションのように、
それを理解する瞬間が来るでしょうか。
その瞬間瞬間を、
向き合ってくださったことに、
感謝したいと思います。
いつか先生から学んだ事を
本にしたいと思います。
*
先生のご配慮の先に、
わたしは初めて理解者を得ました。
これを人は運命と呼ぶのではないだろうか?
と思えます。
心の通じる相手が存在しているというのは、
なんて幸せなことでしょうか。
存在があること。
それは本当に驚くべき事実だと思います。
接点が遠く、
生活に関わらなくても、
そこで積み重ねた時間とそのやり取りが、
奇跡のようにわたしを守っています。
*
わたしが存じ上げているのは、
先生のある側面の、
ほんのひとかけらです。
それなのに、
こんなに涙が出る。
人との関わり深さは、
時間ではなく密度なのかも知れませんね。
先生の言葉が頭の中で繰り返されることがあります。
それはきっと、
それが
魂に届く言葉だったからだと思います。
先生から教わったことは、
計り知れません。
*
わたしには、
先生のように
人生に大きな教えを残してくださった
何人かの素晴らしい先輩方がいます。
一瞬にして謙虚さの大切さを
一流とはどういうことかを教えてくださった方、
礼を欠かさぬ大切さを
人生を通して教えてくださった方、
気にかけていただくことのありがたみを
教えてくださった方、
失ってからその方々の偉大さを知るなんて、
なんて理解の遅いことだろうかと思います。
先生には、
間に合うと思っていました。
でも間に合わなかった。
なんとも言えない気持ちでいます。
でも。
仕方なかったですね。
そう思います。
だけど。
先生に、
あと一度だけ、
お会いしたかったです。
会って、お礼を言いたかったです。
*
本当に本当にありがとうございました。
ご冥福を心からお祈りいたします。
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